私たちの住む世界はつねに変化しているとは、よく言われることです。その世界で今、人権や環境、平等に対する意識が飛躍的に高まりつつあります。この新たな考え方を持たずに企業活動や商取引を行うことは、難しいでしょう。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資、つまり責任感と信念のある、持続可能な投資が台頭しつつあるのは、この豊かな倫理的土壌においてなのです。今日では、これまでと違う投資判断をする投資家が増えてきています。彼らは、資金をもって何らかの利益を得るだけでなく、意味のあることを行いたいと考えています。

しかし、ESGとは現代特有の概念なのでしょうか? そのルーツは、1960年代と70年代に遡ると言って差し支えないでしょう。当時、良心的な投資家たちは「抗議の精神」をもって、道徳に反することを行う代わりに社会の利益になることを行おうと、彼らの資金的忠誠を転換させました。そのようにして多くの資金が、さまざまな不和や分断を生む業界から、手頃な住宅や医療施設といったプロジェクトへと配分し直されました。

この考え方は、1980年代、社会学者のジェームス・S・コールマンが提唱した「ソーシャルキャピタル」が価値測定の基準として認められ、勢いを増しました。これは、現代の環境活動家たちの注目を集めている概念でもあります。

1990年代になると、社会的、環境的な関心を、より伝統的な金融の基準での成功と結びつける「トリプルボトムライン」の考え方が生まれました。2000年代までに、最初の環境金融研究グループが設立されました。このいわゆる「道徳的団体」は、シティ・オブ・ロンドンの銀行家や弁護士、NGOで構成されており、彼らは財務実績と環境・社会的基準との因果関係を立証しました。

投資利益率(ROI)と社会貢献活動は両立しないという従来の見解がついに崩れ始め、2011年、ジャーナル・オブ・フィナンシャル・エコノミクス誌が発表した最も働きたい企業100社のリストは、競合他社と比較して2%を超える株式のリターンを得ました。[1]

2000年代以降、気候変動への意識と関心が高まるにつれ、事業活動には利益を生む以上の機能があるという、かつては傍流だった考え方に「民衆の力」が新たなエネルギーを与え、環境主導のESGを財務上の優先テーマへと押し上げました。

この数年で私たちが目にしているのは、この本来的な、純粋な理想の広がりです。すなわち、お金を稼ぎながら、同時に世界をよりよい場所に変えていくこと、それは可能なのでしょうか?

その答えは、疑いなく「イエス」であると、私は固く信じています。ただ、私の個人的意見よりも意味を持つのは、同様の方向性を示している確固たるデータです。

環境には膨大な価値がある

ESGファンドの優勢は、いかに投資家たちが気候変動などの目前に迫るテーマを目標に定めているかを示しています。

新型コロナウイルスの影響を受けた2020年でさえ、市場に広がった動揺にもかかわらず、ESG投資は世界的な回復を見せました[2]。投資銀行大手のGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)は、顧客に対し「今回の危機以前に、ESG投資への注目は高まりつつありました。そしてこの傾向は、コロナ禍が終息した後もさらに拡大していくでしょう」[3]と述べています。

ファイナンシャル・タイムス誌は、2025年までにヨーロッパのESGファンドは現在の3倍の規模になると予想しています。今後5年間で7兆6,000億ユーロに達し、ヨーロッパのファンド部門の過半数を占めるようになるとしています。[4]これは大きなビジネスであり、その認識は急速に浸透しつつあります。

Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)の調査では、今や資産保有者の5人に4人が、ESG要因の検討は彼らの投資判断に影響するとしており[5]、いっぽうでKPMGは、主要企業の幹部の3分の1以上が、投資家の関心に基づきESGへの注力を高めていると明かしています。[6]

Green Investing Growth

特にグリーン投資に関しては、ESGはまさにゲームチェンジャーです。

基本的に、ESGへの関心が高まることで、企業はより率直に環境への影響に向き合わざるを得なくなるでしょう。しかし、より重要なことは、資金投入がインフラストラクチャー、人材、そして研究へと移行することです。従って、変革的な資金流入のなかで、ESGが必然的にビジネス発展の鍵を握ることになります。

例えば、ESG投資家の目で見て重工業に勝る技術を考えれば、今後数十年で進化を遂げる見込みが高いのはどのセクターかを予測できるようになります。

急激な気候変動(今世紀中に少なくとも2.5度の気温上昇が予測されています[7])に備える世界にあって、今後数年間でESG投資を加速させていくのはESGの「E」、つまり環境(Environment)でしょう。ESG投資によって、人間の環境に対する傲慢な態度がなくなるかどうかは分かりませんが、市場への影響を見ると投資の定量化はしやすいでしょう。

いかにESGがROIを活性化させるか

世界の繁栄のために、より暮らしやすい環境は必須であり、そこには以前のスポットライト記事で論じたように、長期的に派生する問題があります。そのため環境重視の投資は、長期的な信頼感をもたらすきっかけとなり、これは短期的な結果に偏重するあらゆるポートフォリオにおける「聖杯」となりえます。

Barclays(バークレイズ)の7年に及ぶ研究では、ESGの割合が高いポートフォリオは、一貫してESGの割合が低いものよりも良好な成績を収めたことが示されました。環境・社会・ガバナンスの複合的な業績は、平均で0.36%、また環境基準単体では0.27%高まっています。[8]

Green Investing Portfolios

報告によると、ESGを投資グレードのクレジットポートフォリオに組み込むことは、リターンに有害ではなく、有益となりうる」十分な証拠が示されています。ESGの割合の高さは、信用格付けの高さとも一致します。

投資の世界では、「知識は力なり」です。米国の金融大手、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)は、よりよい管理がなされている企業を特定し、また環境の衰退により逆風を受けそうな企業に危険信号を立てる上で、ESGファクターはますます重要性を増していると論じています。

業績、予測可能性、信頼度は投資家にとって強力な動機づけとなり、ESGの高いプロファイルはこの3点を保証するものとなりえます。リスクベースの業界において、ESGが流行語になるのは不思議ではありません。

特に、エネルギー市場は環境投資のトレンドに敏感です。実際、国際エネルギー機関(IEA)は、2020年のパンデミック期間における世界的なエネルギー投資の記録的低迷を指摘しています。ただし、エネルギーセクター全体で18%の資本支出の落ち込みという大見出しの数字には[9]、風力や太陽光などの再生可能エネルギー分野の縮小幅の少なさ(そして回復力の高さ)から分かるように、ESG投資の有望な可能性が隠れています。

2020年には発電投資が全体で7%落ち込んだとの試算があるいっぽう、再生可能エネルギーへの年間支出は前年度比で3%の低下にとどまりました。洋上風力や水力発電といったリードタイムの長いプロジェクトに支えられたことがその一因です。

米国のシェール企業が破綻や解雇によって約45%の削減を行ったことに伴い、石油やガス供給への投資は同時期に3分の1減少しました。当然ながら、石油・ガス会社は、典型的には低炭素技術への投資という方法で迅速に多角化を進めています。

Green Investing Sectors

IEAは、資金的コミットメントは再生可能エネルギー分野に集中していると述べています。2020年には、石油・ガス会社により35億米ドルの最終投資決断(FID)がなされており、これは2019年の彼らの中核分野外での資本支出と比較して、3分の2の増加となります。

賢明な投資家たちには、どこに潮流が生まれるかを本能的に見抜きます。徐々に、そして止まることなく世界の環境意識は高まりつつあり、ESGポートフォリオの環境要因は年々魅力的に映るようになってきています。

これは機関投資家の投資パターンを変えるだけにとどまりません。Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)のような民間企業は、企業と政府両者の投資が、気候変動に対処し、グリーンリカバリーを加速する解決策に配分されるよう促すことができます。Abdul Latif Jameelもその一員である、Clean, Renewable and Environmental Opportunities SyndicateCREO Syndicateのような組織は、グローバルなESG市場全体において、既存の姿勢を改め、民間投資の機会を探っていくための支援をすでに行っています。

CREOが白書で説明しているように、「多くの機関投資家や資産家が化石燃料へのエクスポージャーの再評価を行い、気候リスクに関する政治的な議論が進むにつれて、持続可能な投資への関心は全般的に高まっています」。[10]

なぜESGは成功の方程式なのか

ESGへの関心が、たとえ従業員や投資家にとって心温まるものであっても、企業にとっては死活問題である最終収益に直結します。

経営コンサルタントのMcKinsey(マッキンゼー)は、ESG投資が「一時的な流行、または良い気分になれる活動以上のもの」となるための、5つの主要ポイントを明らかにしています。[11]

  1. 売上の増加:政府当局は、ESGの価値提案に優れた企業を信頼し、新たな市場を開発しようとしています。いっぽうで顧客は、サステナブルな企業や製品に対し、よりロイヤルティを示すようになっています。
  2. コストの低減:エネルギーと水、廃棄物の効率的な使用により、営業利益に最大60%の影響を与えることができます。
  3. 規制および法的な利益:ESGの明確な優先づけは、補助金や政府支援、規制緩和の対象となりやすく、また罰金や強制執行を避けやすくなります。
  4. 生産性の向上:社会的信用の確立が、優れた人材の確保や従業員のモチベシーションの向上につながることが実証されています。
  5. 資産および投資の最適化:長期的で持続可能な活動に資産を投じることで、投資リターンを高め、より環境配慮型の競合に遅れをとるのを防ぐことができます。

「先見の明は収益の追い風となる」と、McKinseyは中国の大気汚染への取り組みを例に挙げて論じています。国を挙げてのこの試みは、2030年までに3兆米ドルの投資機会を生み、その範囲は屋内の空気清浄やセメント産業にまで及ぶことが予想されています。

もちろん、多くの企業にとって、成功するESG戦略を描くのは、言うほどたやすいことではありません。

McKinseyの助言は、環境に関する目標の数を絞り、競合するプロジェクトが相互矛盾する目的で同時進行するのを防ぐこと、また営業利益の短期的成果を得られるよう計画することです。また、投資家向けの文句としては、「地球を救う」ことよりも「価値創出」を強調するメッセージを発することを勧めています。

資金面やコミュニケーション上のニュアンスの他、別の障壁がESG原則の円滑な適用を脅かすことがあるかもしれません。司法管轄によっては、企業はまず株主の富を最大化させる法的義務に直面することがあります。[12]そのような場合には、地域社会ビジネスの風潮、つまり分かりやすく言えば公益と個人的繁栄の間の緊張関係が、いかに微妙であるかが示されます。

もしESGがいまだ個々の企業の視点から進行しているのであれば、課題もまた、1人の投資家の見地にとどまります。

整合性の欠如が可能性の邪魔をする

これだけの証拠を見れば、ESG投資の状況は議論の余地がないように思えます。しかし、この予測の確実性は、その根拠となるデータの信頼性にかかっています。

ESGの資金のエコシステムはいまだ進化を続けており、情報開示に関しては、その点が発行体や投資家にプレッシャーを与えています。ESG慣行の標準化が複数のキープレーヤーによって進められるいっぽうで、用語や開示の枠組みについてはまだまだ多様性が残っています。[13]それらの不統一性のせいで、投資家が信頼できる比較基準が失われてしまいかねません。

Green Investing Ecosystem

ESGの手法は進化を続けており、透明性は増してきていますが、評価システムはまだ移行段階にあります。格付け提供者は、いまだ主要な指標やメトリクス、定性的判断を一元化するため、慣行を精緻化しているところです。

OECDは、投資家がESGの投資機会の価値を十全に理解するには、いくつかの段階が必要であることを強調しています。[14]

  • 妥当性と一貫性ある報告の枠組み
  • 評価システムのさらなる明確化
  • 市場のバイアスを克服するための方策
  • 投資家の社会的および資金的目標との、ESG商品のさらなる整合性
  • よりよいパブリックエンゲージメントおよび規制エンゲージメント

欧州委員会は、新しい持続可能な金融情報開示規則(SFDR)を通じて同等の標準の義務化を目指しており、2021年3月に施行が開始されました。法制は、透明性を高める目的で策定され、いっぽうで「グリーンウォッシング」、つまり見せかけの環境配慮を阻止するものです。

新たな規則では、いくつかの主要な分野における開示を規定しています。すなわち、持続可能性に関するリスク(環境または社会的事象による価値の下落のリスクを含む)、環境的または社会的目標に貢献する活動への投資、そして他のESGに悪影響を与える可能性(人権、汚職防止、贈収賄防止を含む)です。英国は近いうちに、その前例に倣い、自国のSFDR法制を整備すると見られます。[15]

データの信頼性がより高まれば、改良分析を通じて真の価値が獲得できるようになります。

自身の資金がどこへ行き、より広い世界でどんなインパクトを持つのかを正確に把握したいと望む投資家は、ますますデータ駆動型の市場リサーチを利用できるようになります。金融情報企業であるS&P Global(S&Pグローバル)のような組織は、多用途のデータプラットフォームを活用し、「正規化されたESG基準」を作り出しています。そのような専門家による洞察は、ある企業のESGポリシーが、実際に(願わくは再生紙の)書類上の記述と同じだけの価値があるのかどうかが即座に把握できる情報を投資家に提供することを目的としています。

S&PのグローバルなESG評価システムは、世界市場の資本総額の95%を占める7,300社以上を対象としていると謳われています。23の個別の基準スコアと全体の加重格付けを抽出するために、1,000以上のデータポイントと100の設問を使用しています。これは、投資家が持続可能性をポートフォリオの中核方針に据えようとする際に、非常に貴重なツールです。

Green Investing Global Scores

このような信頼性を獲得した上で、社会的意識の高い投資家はどこに資金投入先を見つけるのでしょうか? その答えとして、次第にグリーンボンドが存在感を増してきています。

グリーンボンドが信頼性に太鼓判を押す

信頼性があり、数値化が可能で、透明性が確保されている。グリーンボンドは、グリーン投資が正しい方向へ進むためのさらなる一歩となります。しかし、グリーンボンドとは正確には何を指し、認識の形成や新たな投資の誘致にどう役立つのでしょうか?

グリーンボンドを、世界各地の環境プロジェクトの資金調達を促進する、確定利付きの資金保証だと考えてみましょう。もしくは、投資家が地球の未来に自信を持って賭ける方法です。

これら証券は、さまざまな気候変動緩和策を支えることができます。住宅所有者の資産への太陽光パネル設置の支援や、排出される温室効果ガスの捕獲、珊瑚礁の水温上昇への適応支援、洪水防止用の河川デルタの建設などです。

Green Investing Taxonomy

行政府や銀行、企業や地方自治体まで、世界中の何千もの事業体から認証ボンドは発行可能です。さらにそれらは急速に発展しており、2016年の700億米ドルから2019年には2,550億米ドルへと成長しています。[16]

グリーンボンドの資金調達を行うプロジェクトの幅は日ごとに増しており、人々の想像力と熱心さがある限り、その勢いが衰えることはないでしょう。

ロンドンが拠点のグリーンボンドイニシアチブは、世界初のグリーンボンド認証プログラムであり、設立以来、他の国々がグリーンボンドの上場機関を設置する際のモデルとして使用されています。

Abdul Latif Jameelは、グリーンボンドの多大な可能性に注目し、自社のクリーンエネルギープロジェクトの拡張を図っています。商業規模の再生可能エネルギープロジェクトの世界的デベロッパーであり、Abdul Latif Jameel Energy(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・エネルギー)の一部門であるFRVが主体となって進められています。

FRVは、5大陸で事業を展開し、50以上の再生可能エネルギー工場を建設しています。オーストラリア、ヨーロッパ、ラテンアメリカなどの市場で国際プロジェクトのポートフォリオを保有し、大手銀行や金融機関が管理する合計35億米ドル以上の資金調達を行っています。15年以上にわたり、FRVはESGの原則を実践に移してきました。地域社会とつながり、地元の有望な学生たちに高等教育の奨学金を提供しています。FRVは、再生可能エネルギーソリューションにおいて5GWを超える開発経験を持ち、確かな実績を築いています。現在開発中の資産に加え、総設置容量を2020年の2GWから2024年までに4GWへと倍増させる、固定資産への15億米ドル超の投資計画はその一環です。

2020年9月には、スペイン初のグリーンボンド認証を取得した、エストレマドゥーラ州のサンセルバン太陽光発電所向けに6,400万ユーロの資金を得たグリーンプロジェクトとパートナーを組み、そのESG事業を次のステージへと押し上げました。

太陽光発電工場は2022年に操業開始予定で、毎年291GWhのクリーンエネルギーを発電します。これにより、年間216,000トンの二酸化炭素を相殺し、10万軒以上の住宅に電力を供給します。投資銀行のNatixis(ナティクシス)が、この取引の引受人となりました。ESG格付け調査会社のVigeo Eiris(ヴィジオアイリス)により、パリ協定で定められた2˚C以内の上限に準拠するとして、気候ボンド基準の太陽光基準に対する認証を受けています。

サンセルバンの契約締結から数週間後、FRVは2件目のグリーンボンド取引を成立させました。オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある、この国の再生可能エネルギープロジェクトとしては先駆的な90MWacのSebastopol Solar Farm(セバストポル・ソーラーファーム)への融資契約です。FRVにとってオーストラリアで7番目の太陽光発電所となるセバストポルプロジェクトは、Loan Market Association(ローン・マーケット・アソシエーション/LMA)のグリーンローン原則とグリーンプロジェクト要件に準拠した形で、INGにより資金調達を受けています。

サンセルバンとセバストポルを雛型として、グリーンボンドは確実に、ESGのほぼ無限の可能性を開いていくための中心的な役割を担っていきます。

さらに最近では、米国拠点の巨大企業、Amazon(アマゾン)が「気候変動対策に関する誓約」にグローバルに取り組んでいくことを発表し、世界最大の再生可能エネルギーの買い手となりました。この発表は、ヨーロッパ最大の電力販売契約(PPA)ともなりました。FRVの地元スペイン市場において、私たちはエストレマドゥーラ州とアンダルシア州の間に位置する工場でこのPPAに参加することで、FRVの先駆的資産を継続していきます。より持続可能なエネルギーの未来への移行を促進するというFRVの変わらぬビジョンは、2040年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指すアマゾンの誓約との完全なるシナジーを生み出します。スペイン市場において、経験豊富な発電事業者と提携するというアマゾンの選択は自然なことです。

恩恵の大きい「環境」

ESGが世界の投資市場を一晩にして変容させるというのは、大胆すぎる予測かもしれません。それよりむしろ、この数年間の堅実な実績の拡大は、マインドセットの変革を先導する存在となっています。これが意味するのは、現代における最も喫緊の課題、すなわち環境の保護に取り組む際の、倫理的投資の可能性に対する新たな認識です。

もしESGがいまだに低調で、新型コロナウイルスの影を引きずっていると感じられても、躊躇は不要です。ESGの影響が拡大するのは、規制や報告の手法が国際基準化を達成してからになるでしょう。それはなぜか? ESGは単にお金がお金を生むということを超えて、お金がいかに善に奉仕できるかの手法を提供するものだからです。

それは、企業が競合相手との差異化を図るためのツールを提供し、命運の分かれる資金の確保を可能にします。気候に敏感な今日の世界で投資を獲得することは、投資家の関心を反映することと同義になってきています。これは、企業が単に自社のカーボンフットプリントを減らすというだけでなく、彼らの環境パフォーマンスの透明性を高めることを意味します。ただ環境に配慮するのみならず、より環境に配慮しているとみなされるということです。

いっぽう投資家の観点から見るとESGは、資金がより社会的意識の高い人口の関心を反映する形で配分されるための経路です。ESGに重点を置いた投資が他の投資より優れた成績を挙げれば、自然とさらなる資金が流入します。ビジネス界では、成功が成功を呼び込みます。この点において、透明性と規制には絶対的なプレッシャーがかかっています。米国証券取引委員会(SEC)の議長代理、アリソン・ヘレン・リー氏は最近、以下のように述べています。SECのスタッフは、気候リスクの示唆を含めた開示義務のコンプライアンス確保のため、上場企業届け出のレビューや発行体とのエンゲージメントを通じて非常に重要な役割を担っています。スタッフにより示される見地は、発行体企業が義務を順守し、投資家が適切な投資判断を行うために必要な情報を受け取っていることを保証するために、大変貴重です」

もし政府がただ受け身の姿勢にとどまるのであれば、民間セクターの資金には、担うべき重要な役割において積極的に先手を取っていく先天的能力があります。

ともに、私たちは大企業や政府が「正しいこと」を行うように促し、その行為によって、この社会をより環境に優しく、より持続可能な未来へと導いていくことができるのです。

 

[1] https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=985735

[2] https://www.cnbc.com/2020/06/07/sustainable-investing-is-set-to-surge-in-the-wake-of-the-coronavirus-pandemic.html

[3] https://www.thetimes.co.uk/money-mentor/guide/guide-to-ethical-investing/

[4] https://www.ft.com/content/5cd6e923-81e0-4557-8cff-a02fb5e01d42

[5] https://www.morganstanley.com/press-releases/morgan-stanley-sustainable-signals–asset-owners-see-sustainabil

[6] https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/be/pdf/2018/05/esg-risk-and-return.pdf

[7] https://climate.nasa.gov/effects/

[8] https://www.investmentbank.barclays.com/our-insights/esg-sustainable-investing-and-bond-returns.html?trid=%5b%25tp_AdID%25%5d&cid=disp_sc01e00v00m04GLpa11pv29#tab3

[9] https://www.iea.org/articles/investment-estimates-for-2020-continue-to-point-to-a-record-slump-in-spending

[10] https://creosyndicate.org/news-collection/pathwaystoinvesting

[11] https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Business%20Functions/Strategy%20and%20Corporate%20Finance/Our%20Insights/Five%20ways%20that%20ESG%20creates%20value/Five-ways-that-ESG-creates-value.pdf?shouldIndex=false

[12] https://www.forbes.com/sites/csr/2010/09/21/what-ebays-court-fight-with-craigslist-reveals/

[13] https://www.oecd.org/finance/ESG-Investing-Practices-Progress-Challenges.pdf

[14] https://www.oecd.org/finance/ESG-Investing-Practices-Progress-Challenges.pdf

[15] https://investors-corner.bnpparibas-am.com/investing/an-introduction-to-the-sustainable-finance-disclosure-regulation/

[16] https://www.climatebonds.net/2020/01/record-2019-gb-issuance-255bn-eu-largest-market-us-china-france-lead-top-20-national