世界風力sネルギー会議(World Wind Energy Council)の新しい報告書は、世界中の風力エネルギーの継続的な進歩と商業的実行可能性を強調しています。

世界風力エネルギー会議(GWECGlobal Wind Report:年次マーケットアップデート2017年」、2018年4月に発表された風力発電設備が世界の再生可能エネルギー産業の中心にどのように根付いているかを明らかにしています。

2016年に締結された国連気候変動枠組条約は、地球の気温の避けがたい上昇を政府と産業の積極的な行動を通じて2°C以下に抑制することを目的としています。この目標を達成するためには、世界のエネルギー供給に占める再生可能エネルギーのシェアは、現在の15%から2050年までに65%に到達しなければなりません[1]

GWECの報告書には、それに向けた多くの前向きな根拠が強調されています。経済的な現実として、広報活動キャンペーンが期待するよりも風力エネルギーははるかに効率的に推進されます。北米、中南米、北アフリカ、インドでは、入札額は0.03米ドル/kWh、メキシコでは0.02米ドル/kWhを下回っています。

まさにGWECによると「今日の風力発電は、世界中のほとんどの市場で非常に競争力のある価格を設定できる技術なのです[2]さらにこう付け加えます。「風力発電は完全に商業化され、助成金を必要としない技術に急速に移行しています。大幅な助成金を受けた化石燃料や核燃料会社との市場競争に勝ったのです」。

2017年には風力発電に107億米ドル以上が投資され、52GWの風力設備が設置されました。世界の風力発電設備は合計539GWです。2007年から2016年の間に、世界の風力発電設備は399.2%も跳ね上がりました[3]

GWEC事務局長のSteve Sawyer氏は以下のように述べます。「風力発電は化石燃料から移行に際して先頭に立っており、価格、性能、および信頼性の面で強豪を一掃し続けています。

 オンショアとオフショア両方で、風力発電は持続可能なエネルギーの未来を定義するキーになっています[4]」。

いくつかの国では風力エネルギーの大幅な進歩が見られます。例えば、デンマークでは、2017年の電力の44%が風力発電であり、さらに342GWの設備も導入されました[5]。ウルグアイは風力を使って電力の30%以上を発電し、ポルトガル、アイルランド、スペイン、ドイツは電力の約17%〜25%を風力で発電しています。

Abdul Latif Jameel Energyの一員であるFotowatio Renewable Ventures(FRV)のマネージングディレクター(ヨーロッパ)のAndrea Fontanaはいくつかの発展がみられると考えています。風力エネルギーを取り巻くポジティブな姿勢について。こう述べました。「風力部門が非常に競争力があることは間違いありません。私たちは2017年の公開入札でこれを知りました。トレンドはより低いエネルギーコストへ向かっていると分かったのです。機器の性能と容量は大幅に増加しましたが、設置、運転、保守のコストは削減され、いずれもより競争力のある価格設定に貢献しました。

 「多くの入札では、風力と太陽光は互いに競争しなければならず、風力が優位であることを示しています。風力エネルギーは確かにコストの面で競争力があり、場合によっては従来のエネルギーをも上回るため、補助金なしで入札プロセスを優位に戦うことができます」。

イノベーションと効率性に基づいた未来の構築

これまでの入札価格の引き下げは開発者に新たな圧力を加えることになりますが、Andreaは依然として前向きです。「低価格は利益に圧力をかけます。しかし、それは必ずしも悪いことではありません」彼は言います。「すべての人がより効率的にならざるを得ないのです」。

彼はさらに付け加えます。FRVのような開発者や投資家だけでなく、土地所有者、技術供給者、投資家、スポンサーからアドバイザー、貸し手に至るまで、創造性と効率性が要求されます。FRVは競争することを恐れておらず、風力が成熟し助成金を受けない産業となることは良い発展だと考えています。

 「私たち自身のプロジェクトを発展するには、より競争力を高め、より効率的にする必要があります。しかし、私たちは過去11年間プロジェクトを開発してきたので、この課題への取り組みやすべての面で本当に効率を追求するには良い立場にあるでしょう」。

GWECの分析によれば、世界的な風力発電設備は比較的安定した2018年の後、2019年に顕著な増加を示すことが示唆されています。「グローバルな政策と密接に結びついているため、予測することは非常に困難です」とAndreaは言います。「しかし、インドや中国などの発展途上国や、現在2030年を目標に掲げているヨーロッパなど新たな目標を持つ成熟地域を中心に、2019年に再び設備導入が跳ね上がるとの期待が寄せられています」。

グローバルな展望

風力発電の増加は、単一の地域に限定されず、世界的な現象です。2017年には、世界のすべての地域が風力発電施設全体で大きな進歩を遂げました。アフリカと中東の設備容量は15.9%増加しました。アジア(12%増)、ヨーロッパ(10.4%増)、中南米(16.8%増)、北米(8%増)で、風力発電容量は著しく発展しました。

インドは風力エネルギーにとって大きな可能性を秘めた市場です」とAndreaは言います。「これは非常に競争が激しく、経験豊かで安定した地元企業がたくさんいます。」海外の事業者にとって利幅は小さく、インドの景観規制当局は複雑で極めて大きな課題であるものの、Andreaによると、FRVはインドのタービンメーカーとのパートナーシップについて話し合っており、インド市場への参入可能性を模索し続けています。

報告書で強調されている高いポテンシャルを持つもうひとつの地域は中南米、特にアルゼンチンです。「アルゼンチン市場が過去2年間と同様に発展し続けるならば、さらに投資が増えるだろう」とGWECの年次マーケットアップデート2017で述べられています。[6]

FRVは同国における機会を増やす多数の主要事業者の1つです。「我々は、再生可能エネルギー市場がどういう経緯でその地域に登場したのか注視してきました」。そうAndreaは言います。「アルゼンチンの特定の地域における発電容量要因は他の地域と比較して驚異的です。国の南部では、年間を通して安定した強風が常にあります。しかし、慎重に考えなければならないことは利益と銀行融資の可否です。我々は、特に風力プロジェクトのための資金調達が可能であると分かっていますが、収益の水準は他の市場ほど高くはありません」。

FRVはその他の中南米の国の風力エネルギー市場でますます活動的になっています。すでにチリでは、年間540GWhの太陽光・風力発電プロジェクトを開発しており[7]、コロンビア、ペルー、ウルグアイで潜在的なチャンスを積極的に伺っています(2017年だけで295GW、すなわち24.4%の風力発電導入が増加[8])。

「太陽光と風の組み合わせは将来的にもっと一般的になるだろうと我々は考えています」とAndreaは言います。「太陽光と風力はうまく連携しています。太陽光は毎日生産しますが、風は多くの場合夜間発電で補完できます。

 24時間発電のコアを提供します。これは通常、昼間のみの施設よりも優先されます」。

MENAT(中東、北アフリカ、トルコ)地域における風力の利用

Abdul Latif Jameel Energyの一環として、FRVはまた、サウジアラビア、市民とそのコミュニティに良いインパクトに目を向けています。サウジアラビアは長い間、太陽光発電の可能性を世界的に認知されてきましたが、風力エネルギープラントにとっても理想的な条件が揃っています。

北東および中部地域、ならびに西部の山に近い地域では、風力発電所は利益を生む事業にとって理想的な環境が整っています。3つの場所すべてで、平均風速は風力設備の商業的成功に必要とされるものよりも33%高いのです[9]

Andreaは説明します。「サウジアラビアでは、国家再生可能エネルギー計画が政府の目標を非常に明確に示しています。エネルギー源としての石油依存度を多様化することが決定され、再生可能エネルギーにとって非常に良い投資環境となっています。

 2017年に発行された太陽光と風力の両方の入札の分析を続けており、今後も市場の分析と評価を続けます。われわれは、エネルギー省を通じてサウジアラビア政府が発行しているすべてのプログラムを緊密に監視しています。」

中東やアジアには、レバノン、パキスタン、エジプトなど多くのチャンスがあります。「我々は、レバノンの大臣会合で風力プロジェクトの新たな局面が承認されたと知りました。パキスタンも非常に魅力的な市場であり、当局はすぐに新しい風力発電を開始すると認識しています。それが我々が密接に分析していることです」

FRV:再生可能エネルギーの設備におけるパイプラインの拡大

それが中南米、MENAT(中東、北アフリカ、トルコ)地域、または他の地域にあるかどうかにかかわらず、FRVの野望は明確です。「これまでのところ、我々の風力エネルギーパイプラインは非常に高度な段階で約1.1GWであり、土地を確保し風力測定活動は既に開始しています。また風力マストは風データを収集しており、相互接続および環境事前実行可能性調査も実施されました」とAndreaは説明します。「メキシコで私たちはその段階にいます。例えば、メキシコにパイプラインを統合し、来るべき風力入札に確実に参加することが目標です。

 チリで開発中のプロジェクトでは約140MWを保有しており、ヨーロッパでも100MWを確保し共同開発契約を締結しています。

 ヨーロッパはマーケットが成熟しており、わずか2年前に風力活動を開始したため、状況は若干異なっています。成熟した市場であるため、メキシコとチリのような未成熟のマーケットでゼロから作ることに比較して、すでに開発中のプロジェクトに入るのは簡単です。」

技術が進歩し続け価格が一貫して低下するにつれて、風力エネルギーと太陽光発電を活用するハイブリッド設備が、世界の未来のエネルギー融合にますます明るいビジョンをもたらすと確信しています。

年次マーケットアップデートレポートによると、「風力/太陽光ハイブリッドの登場により、洗練されたグリッド管理とますます手頃な価格のストレージは、完全に商業化された石油フリーの電力セクターに似た青写真を描き始めています[10]

Abdul Latif Jameel Energyは、Fotowatio Renewable Venturesを通じ、クリーンエネルギー革命の最前線に立つことで、サウジアラビア、MENAT地域、およびその他の国々の市民やコミュニティに利益をもたらします。

 

 

[1] Turning to Renewables: Climate-Safe Energy Solutions, International Renewable Energy Agency, November 2017

[2] Global Wind Report – Annual Market Update 2017, Global Wind Energy Council, 25 April 2018

[3] Renewable Energy Statistics 2017, International Renewable Energy Agency, 2017

[4] Cost-competitiveness puts wind in front, Global Wind Energy Council, 25 April 2018

[5] Global Wind Statistics 2017, Global Wind Energy Council, 14 February 2018

[6] Global Wind Report – Annual Market Update 2017, Global Wind Energy Council, 25 April 2018

[7] FRV awarded 540 GWh in Chile, Fotowatio Renewable Ventures, accessed May 2018

[8] Global Wind Statistics 2017, Global Wind Energy Council, 14 February 2018

[9] Renewable Energy in the GCC: The Human Impact, Opening Doors, 21 November 2017

[10] Global Wind Report – Annual Market Update 2017, Global Wind Energy Council, 25 April 2018