バッテリー貯蔵システムがますます進化し、世界中で研究開発がかつてない速度で続けられている中、このエキサイティングな技術の最近の展望はどういったものでしょうか。そして、将来のエネルギー計画にどのように影響する可能性があるのでしょうか。

再生可能エネルギーの台頭が加速し続けているのに伴い、さまざまなハードルを乗り越える必要があります。最大の課題の1つは、需要と供給の変動時に送電網のバランスをどのように取るかです。つまり、太陽が照っていない、または風が吹いていない時、再生可能エネルギーを基にしている発電はどうなるのでしょうか。

ソリューションの1つは、すでに世界中で発電プロジェクトに大きな変化をもたらしているバッテリー貯蔵です。

KPMGによると、断続的な再生可能エネルギー源、すなわち太陽光発電(PV)と風力の広範囲かつ急速な導入により、「世界中の電気システムを近代化させる取り組みが加速[1]」しています。この近代化プログラムの主な部分は、バッテリー貯蔵システムの開発、導入、発展です。

テスラのギガファクトリー:テスラは2014年6月に、ネバダ州スパークス郊外にてギガファクトリーの建設に着工しました。2018年半ば、ギガファクトリー1におけるバッテリー生産は年間でおおよそ20GWhに達し、世界最大のバッテリー生産工場となりました(出典:tesla.com)。

電気自動車の製造需要の急増による加速[2]に加え、技術の進歩によって、再生可能エネルギーを貯蔵し、従来型の電力供給に対するバックアップオプションを提供する大規模設備が登場し始めていることで、バッテリー貯蔵のコストは劇的に低下しつつあります。同時に、バッテリー貯蔵システムの容量と性能も飛躍的に上昇しています。

RIVIAN EVレンジの「スケートボード」プラットフォームは、小型のストレージと低重心を特徴としています

 

EVの新興企業であるRIVIANは、2018年のロサンゼルスオートショーで、1回の充電による最大航続距離が645kmの電気ピックアップトラックのR1Tを発表し、注目を集めました。RIVIANは、EVパラダイムを変えることを目指し、すべての旅が地球ではなく人間の精神に印を残すべきであると信じ、外に出て世界を探検するための自動車と技術を開発しています。カリフォルニア州アーバインにあるバッテリーセンターでは、この目的で起伏のある「スケートボード」プラットフォームが設計されています。バッテリーはホイールベースの間の低い位置に収納されています。

R1T向けに提供されているバッテリーは、180kWhバッテリー(航続距離:645km)、135kWhモデル(航続距離:490km)、105kWhオプション(航続距離:370km)の3種類となっています。DC急速充電器では、わずか50分間で最大160kWhまで充電できます。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)のEMEA責任者であるSeb Henbest氏は次のように述べています。「安価なバッテリー貯蔵の到来は、風力と太陽光による電力の提供を巧みに行うことがますます可能になることを示すものであり、風が吹いていなくても、太陽が照っていなくても、これらの技術によって需要を満たすことが可能になります。その結果、再生可能エネルギーは、石炭、ガス、原子力の既存市場にますます食い込んでくることになります[3]。」

チリにおける先駆的な開発は、すでにこれらの予測を現実に変えつつあります。Abdul Latif Jameel Energy傘下のFotowatio Renewable Ventures(FRV)は、統合型バッテリー貯蔵機能を備えた革新的な540GWhの太陽光・風力ハイブリッド発電プロジェクトを開発しています。

FRVにとってラテンアメリカで3つ目となるこのプロジェクトは、同社初の風力・太陽光ハイブリット発電プロジェクトであり、初めてバッテリー貯蔵を使用して、途絶えることなく再生可能エネルギーの供給を可能にするものです。

「太陽光や風力に適さない条件の時は、バッテリーが自動的に介入し、貯蔵されている再生可能エネルギーを放出し、ネットワークに対する再生可能エネルギーの絶え間ない供給を維持します」と、FRVのCEOであるDaniel Sagi-Vela氏は説明しています。

同様のイノベーションは、世界中で再生可能エネルギープロジェクトの持続可能性に変化をもたらしています。日本では、東急不動産株式会社、三菱UFJリース株式会社、日本グリーン電力開発株式会社の3社が、北海道釧路町において25MWhのリチウムイオンバッテリーを備える、出力規模92MWの太陽光発電所を建設しています[4]

 

バッテリー貯蔵の現在の状況

マッキンゼー・アンド・カンパニーの専門家達は、「貯蔵の時代が来ていることは間違いない[5]と固く信じています。

ブルームバーグNEFは、バッテリーの高度容量技術への投資額は2050年までに5,480億米ドルに達し、その内の41%がアジア太平洋で投資され、ヨーロッパでは1,680億米ドルが投資されると予測しています[6]

 

予測されている新容量である1,291GWの内訳は、3分の2が送電網レベルであり、その他の33%は家庭や企業の私設設備によるものであると言われています[7]

これを背景にすると、バッテリー貯蔵技術の能力に対して世界中で注目が集まっていることにも頷けます。その理由の一部には、Elon Musk氏と彼の会社テスラが、2017年に当時世界最大のリチウムイオンバッテリーであったものを、南オーストラリア州のHornsdale Power Reserveに提供した際に話題を集めたことも挙げられます。Musk氏は、わずか100日間でバッテリーを提供できるか、さもなくばプロジェクトに対するすべての支払いを放棄するという注目の賭けに参加したのです。

南オーストラリア州、Hornsdale Power Reserveのバッテリー。


このバッテリーは、Hornsdaleのウィンドファームにある風力タービンからの余剰エネルギーを貯蔵するもので[8]、停電時に8,000戸の住宅に24時間、または30,000戸以上の住宅に1時間供給するのに十分な電力を保有しています[9]。運営が開始された最初の一カ月の間に、2つの異なる状況でその価値が示されました。2017年12月、ビクトリア州で石炭火力発電を行っているLoy Yang発電所が停電に見舞われた際、このバッテリーはわずか140ミリ秒で反応しました[10]。南オーストラリア州のエネルギー大臣であるTom Koutsantonis氏は、代わりであるトーレンス島の発電所であったなら「市場にエネルギーを送り同期するのに30分から1時間はかかるだろう[11]」として、その明らかな違いを表現しました。

電力需要が発電量を超える場合、代わりのエネルギー源がバランスを取らなければならないことは、エネルギー供給の基本法則です。しかし、蒸気タービンを備えた従来の発電所でも、効力を発するのに30秒かかることがあります[12]。ところで、テスラのバッテリーは、トーレンス島よりははるかに早く反応した一方、40ミリ秒で0%から100%に出力電力を増やせるドイツのネットワークで使用されているバッテリー貯蔵ソリューションを著しく下回っています[13]。英国の億万長者であるSanjeev Gupta氏は、南オーストラリア州の10億米ドルの再生可能エネルギー計画の一環として、テスラのものよりも大きなバッテリーを設置する計画をすでに立てています[14]

一方メキシコでは、国で最初の送電網規模のバッテリーが、モンテレーの自動車工場向けの130MWマイクログリッドのバックアップとして設置されました。「極めて早く反応できるものが必要でした」とバッテリーの開発会社、Arroyo EnergyのプリンシパルであるMatt Ginzberg氏は述べています[15]

成功の経済学

しかし、バッテリーベースの発電の性能のスピードと同様に重要なのは、経済上の問題です。

エネルギー分野で大規模な展開を達成するための新しい開発には、有利な経済的展望が必要です。技術の進歩に伴い、バッテリー貯蔵の経済的側面は無視できなくなっています。「損益分岐点に達するには、一回の充電・放電サイクルで1メガワット時あたり約200米ドルを稼ぎ出す必要があります。」しかし、20187月にリリースされたBNEFのレポートによると、「2020年までにその額は100ドルを下回る可能性があります[16]」。

ロッキーマウンテン研究所(RMI)が作成した2015年の研究報告『The Economics of Battery Energy Storage』によると、エネルギー貯蔵は、設置によって複数の機能を実現できる場合には理にかなっています。これは結果的に複数の収益源または回避されたコストクレジットになります(以下に図示されています)。

 

バッテリー貯蔵システムの設置により、1日にたった数時間稼働する「ピーク時専用」発電所を建てる必要をなくせることから、大幅な節約にもつながります[17]。これを合算すると、バッテリーベースの施設の初期コストはより一層有利なものになると主張されています[18]

2025年までに1,500 MWのエネルギー貯蔵を配備するという目標を設定することをニューヨーク州の当局者に促したのは、これらのメリット組み合わせにほかなりません[19]。これはニューヨーク州のての住宅の20%の電力需要に相当します。「エネルギー貯蔵をニューヨークのエネルギーセクターで起こっている動的な変化の最前線に」の位置づけるその計画は、以下を含む多くのメリットをもたらすとされています[20]

  • CO2の排出量を10年間で100万トン減少させる
  • 2030年までに貯蔵セクターで30,000の雇用を創出する
  • 再生可能エネルギーは州のエネルギーミックスの大部分を占めるため、ピーク時の需要急増への対応能力を提供する

海水淡水化プラントのより環境に優しい未来

また、再生可能エネルギーとバッテリー貯蔵が組み合わされたソリューションは、水の供給などの「生活基盤」に不可欠なその他の産業の持続可能性に関する計画を前に推し進める可能性も秘めています。

電力は、海水淡水化プラントの持続可能性と商業的な実現可能性の向上における最大の課題の1つです。従来の熱海水淡水化プラントは、多量のエネルギーを消費するため、高度の炭素排出につながります。太陽光や風力発電のような再生可能エネルギーを使用したとしても、このような発電所は年中無休では稼働しないため、再生可能エネルギーのギャップを埋めるために石油やガスベースのタービンを使用することで大量の排気ガスが発生します。

新世代の逆浸透海水淡水化プラントは、熱プラントと比べるとエネルギー効率がかなり高く(実際のところ10倍の効率)、絶え間なく電力を供給できる再生可能エネルギー発電所の不足は、依然として問題を提起しています。

しかし、チリでFRVが先駆的に行っている再生可能エネルギーとバッテリーのソリューションを使えば、年中無休で途切れることなく再生可能エネルギーで海水淡水化プラントに電力供給することができます。

これは海水淡水化プロセスをカーボンニュートラルにするだけでなく、海水淡水化プラント、特に大量の電力を必要とする火力発電所に電力を供給するために使用するのではなく、大量の石油を輸出用に解放することにもなります。

「再生可能エネルギーソリューションは、海水淡水化プラントの設置場所の点でもさらなる柔軟性をももたらします」と、Abdul Latif Jameel Energy傘下のAlmar Water SolutionsのCEOであるCarlos Cosin氏は述べています。「海水淡水化プラントを従来の発電所の近くに設置する必要はなくなります。実際に水が必要とされている町や都市のずっと近くに建てられるようになります。」

 

民間によるエネルギー革命の推進

バッテリー貯蔵の進化が、エネルギーセクターと海水淡水化セクターを再定義する可能性が高いことは明らかではありますが、メリットを得られるのは大規模なインフラ開発と公共システムに留まりません。

ソーラーパネルや家庭用バッテリー貯蔵設備から絶え間なく住宅に電力を供給している個人もいるため、業界の有力者の間では、バッテリー貯蔵が住宅レベルでのエネルギーの使用を一変する可能性についても興奮が高まっています。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、家庭のバッテリー貯蔵に関する肯定的な評価を先導している企業の1つです。「最終的に、太陽光をストレージおよび小型発電機と組み合わせることは(送電網の一斉脱落として知られています)、高コスト市場の一部の顧客にとっては数十年ではなく数年で、経済的に意味を成すようになります[21]。」

現実となってきているこの見通しの初期の兆しは、50,000戸にソーラーパネルとバッテリーが設置されている南オーストラリア州で現れ始めています[22]。極東では、日本の公益事業者で送電系統運営業者の1つである東京電力ホールディングス(TEPCO)が、住宅のエネルギーゼロ基準への移行に向けた国の動きの一環として、住宅用の太陽光発電とバッテリーエネルギー貯蔵を顧客に提供することを計画しています[23]

「バッテリーを巡るさまざまな技術があり、多数の研究開発が進行しています[24]とFRVのCEOであるDaniel Sagi-Vela氏は述べています。「バッテリー貯蔵により、屋根の上に設置したパネルから、エアコンも含め、家庭内のすべてのものを使用できます。1日うちの特定の時間帯でその他の設備や機器を使用していないときにバッテリーを自動で充電することになります。」

2018年5月、カリフォルニア州は、2020年以降、新築の住宅や低層集合住宅にソーラーパネルの設置を義務付ける米国で最初の州となりました。バッテリーは、それを押し進める考えを形成した主要な1部分です[25]。一方、カナダのノバスコシア州では、Nova Scotia Powerが2020年までに、40%を再生可能エネルギーとする目標の達成を支援するために、バッテリー電源を活用する計画を立てています。

先駆的な試みの一環として、10軒の顧客の家に大容量バッテリーを設置しました。バッテリーは風力タービンによって一部電力が供給されている電線につながれています。Nova Scotia PowerのシニアプログラムマネージャーであるJill Searle氏はその動きを「革命的」と説明しています。彼女は次のように述べています。「バッテリー貯蔵技術は、その信頼性の高い『常に稼働している』サービスをNova Scotia Powerがどのようにして顧客に提供できるのかという点で、次の大きなテーマといえます[26]。」

同様のアプローチでは、ドイツの家庭は夕方から夜の時間帯にかけて、小人数の家族のニーズを満たせる太陽光システムと4.4 KW/hの貯蔵デバイスを含む、バッテリー貯蔵ベースの電力パッケージを購入することができます[27]

サウジアラビアの新しい未来の中心で

現在では、バッテリー貯蔵設備の導入が「生活基盤」である電力や水にとって非常に重要であり、産業の形勢を一変するものになることが広く受け入れられています。

Abdul Latif Energy Saudi ArabiaのCEOで、Abdul Latif Jameel Investmentsのシニアマネージングディレクター兼取締役会メンバーであるOmar H. Al Madhi氏は、サウジアラビアと広域なMENAT(中東、北アフリカ、トルコ)地域によりクリーンで、健康的な未来をもたらすことを目指し、Abdul Latif Jameel EnergyとFRVのグローバルな知識と経験豊富なリーダーシップチームを一致団結させ、このエキサイティングな段階の最前線にある国で組織の取り組みを率いています。

「バッテリー貯蔵を太陽光発電、風力、水のソリューションにわたるAbdul Latif Jameel Energyの最高クラスの再生可能エネルギーの供給と組み合わせることで、サウジアラビアは、革新的な変化を達成し、21世紀、そしてその後の世界の再生可能エネルギー市場における戦略的な巨人としての立場を確立できます。」

Al Madhi氏の野望は、「環境と天然資源を守ることで、イスラム教の、人類の道徳的な義務を実現する[28]」ことを強調する、サウジアラビアの「ビジョン2030」計画の目標と密接に連携しています。また、バッテリー貯蔵ソリューションなどの新たな技術的進化を支えるための同国の決意をさらに示し、次のように付け加えています。

「保護は未来の世代に対する責任でもあり、日々の生活の質になくてはならないものです。あらゆる類いの汚染を減らすことで環境を保護するよう努めていきます。」

実際に、21世紀の30年目に突入する準備を整えている中で、バッテリー貯蔵は世界のエネルギーミックスにおいてますます重要な役割を果たすと思われます。環境、効率、経済的な理由によりかつては広く見向きもされなかった技術が現在では、送電網規模の電力と個人住宅の両方に対する主要な支援メカニズムとして出現してきているだけでなく、自動車セクターにおいてエキサイティングで新しい可能性をももたらしています。Abdul Latif Jameelは、すべての人により良い未来をもたらすために努力し続けており、この最新のエネルギー革命の中心にいる機会を享受しています。

[1] Electricity Storage Insight, KPMG, 2016

[2] New Energy Outlook 2018, Bloomberg NEF, 2018

[3] New Energy Outlook 2018, Bloomberg NEF, 2018

[4] Japan’s Largest-scale Battery-equipped Solar Plant to Be Built in Hokkaido, Solar Power Plant Business, 6 September 2017

[5] Battery storage: The next disruptive technology in the power sector, McKinsey & Company, June 2017

[6] New Energy Outlook 2018, Bloomberg NEF, 2018

[7] New Energy Outlook 2018, Bloomberg NEF, 2018

[8] Tesla’s enormous battery in Australia, just weeks old, is already responding to outages in ‘record’ time, The Washington Post, 26 December 2017

[9] Elon Musk just met his 100-day deadline on a $50 million bet and Tesla’s giant battery is ready to roll, Business Insider Australia, 23 November 2017

[10] Elon Musk’s massive backup battery took just 140 milliseconds to respond to crisis at power plant, International Business Times, 25 December 2017

[11] Elon Musk’s massive backup battery took just 140 milliseconds to respond to crisis at power plant, International Business Times, 25 December 2017

[12] Distributed Energy: Innovation in solar, PwC, 15 August 2016

[13] Distributed Energy: Innovation in solar, PwC, 15 August 2016

[14] Sanjeev Gupta: $1bn South Australia renewable energy plan will mean cheaper power, The Guardian, 15 August 2018

[15] Mexico Gets Its First Grid-Scale Battery – at a Car Factory, Green Tech Media, 17 December 2018

[16] There’s a Hidden Battery Play in the ‘Extremes’ of Power Prices, Renewable Energy World, 31 July 2018

[17] Hyundai building 150 MW energy storage battery in South Korea, Digital Journal, 7 December 2017

[18] Hyundai building 150 MW energy storage battery in South Korea, Digital Journal, 7 December 2017

[19] New York unveils roadmap to 1.5 GW storage by 2025, Utility Dive, 21 June 2018

[20] New York State Energy Storage Roadmap and Department of Public Service / New York State Energy Research and Development Authority Staff Recommendations, 21 June 2018

[21] Battery storage: The next disruptive technology in the power sector, McKinsey & Company, June 2017

[22] Tesla Tapped by Australia for Solar-plus-Storage Virtual Power Plant Plan, Renewable Energy World, 5 February 2018

[23] Renewable retail plans from Japanese utility TEPCO include home battery rollout, Energy Storage News, 5 April 2018

[24] The Business Breakfast, DubaiEye 103.8, 17 January 2018

[25] California poised to be first state to require solar panels on new homes, The Guardian, 9 May 2018

[26] Nova Scotia Power Engages Eager Elmsdale Residents to Test Intelligent Feeder Pilot Project, Nova Scotia Power, 8 February 2018

[27] Electricity Storage Insight、KPMG、2016年

[28] Vision 2030, Kingdom of Saudi Arabia