Tzu-Chieh TangZijay)はAbdul Latif Jameel水・食糧安全保障研究所(J-WAFS)の資金援助を受けているMITの生物工学科の博士課程の学生です。彼の研究は、水の汚染レベルを記録し、生物による環境修復技術(バイオレメディエーション)として役立つ「流水センサー」の開発に焦点を当てています。元々台湾から来たZijayは、アラブ首長国連邦のマスダール研究所で修士号を修得した後、MITに入学しました。

J-WAFSコミュニケーション・プログラムマネージャーのAndi Sutton Zijayが研究とその目的について話をしました。

  1. MITJ-WAFSと勉強した理由は何ですか?

私が学部生だった時、合成生物学は比較的新しい分野でした。コンピュータサイエンスと電気工学の原理を応用して生体細胞の回路設計を行う方法を扱った論文を読んで 「これは本当にかっこいい!」と思ったのです。

私はいつも自然に着想を求めてきました。多くの生き物は自己浄化と自己治癒の側面を持っています。全てが自然の中にあるんです。人為的なアプローチでこれらのプロセスを複製するのは非常に難しいので、私は自然の一部を用いてシステムを再現できるのかを知りたかったのです。もちろん、私は合成生物学の研究に関して最高の環境の一つであるMITに目を向けました。MITには優れた材質科学のコミュニティもあり、物質や外形に興味があった私にとっては良い組み合わせでした。

Q.あなたの研究で取り組んでいる問題は何ですか?

水の感知は、通常、電子センサーまたは質量分析計によって行われます。これらの方法は、現在バイオセンサーが提供することができるよりも良い結果をもたらします。生物学的センサーが理解されて久しいのですが、バイオセンサーを安全かつ安価に導入する方法はまだ見つかっていません。私たちの研究室はこの問題を解決しようとしています。我々は、電子センサーに比べてバイオセンサーがどのように利点を持つかを証明しようとしています。たとえば電源供給がなくても機能するので、現代的なインフラがない遠隔地でも使用できるということです。

Q.バイオセンサーはどのように機能しますか?

私たちの研究室では、環境刺激を感知し対応する生体物質を設計しています。合成生物学を使用して大腸菌や出芽酵母のような微生物を設計することで、特定の汚染(重金属やその他の化学物質)を感知すると光を発し記録することができます。

生体物質からデバイスを作る上での主な課題は、細胞を収容する実体的な構造がないことです。私たちが用いる大腸菌は浮遊性ですのでバルク材を形づくることはありません。そこで、私たちはMITの機械工学部門のXuanhe Zhao教授のグループと共同で研究し、彼らが微生物を収容するために開発した強靭なヒドロゲルを使用します。これは分業になっているというわけです。ヒドロゲルが構造的な統合を提供し、人工細菌が感知を行います。

Q.これはもともとインスピレーションを得ていた自己生成型の生体を作り出しているのですか?

実際は違います。私たちが本当に望んでいるのは、微生物や他の生物を作り、独自の容器を作り、水分感知をすることができるかどうかを見ることです。それが私が今取り組んでいることです。Imperial College Londonの生体工学部門およびMITの別の材料科学と工学科の研究室と協力して、酵母を利用してバイオレメディエーションを行い、化学的・生物学的汚染物質を感知し除去する生体フィルターを作成しています。作業はまだ初期段階ですが、結果は成功を期待できるものです。

Q.合成生物学の研究には長い時間を要することも少なくありません。何をもってプロジェクトを完了としますか?

特異性と感度の点で電子水センサーを上回ることができれば完了になるでしょう。ただ私たちはまだそこには届きません。バイオセンサーが工業用の水感知製品に発展しうることを示せれば、より多くのサポートを得られると考えています。

Q.あなたの研究にとって、J-WAFSの支援はどの程度重要ですか?

さらに研究を進めたいと思っている分野の1つに、センサーを最適化することで本当の潜在能力を知るということがあります。これは、J-WAFSに本当に助けてもらっている別の一例です。J-WAFSを通じて私は別のJ-WAFS研究会員であるXylem Inc.のこの研究への関心と今後可能なサポートについて紹介してもらいました。私がJ-WAFSに所属していなかったら、これは決して起こりませんでした。

Q.あなたの現在の仕事の他に面白い水の研究はありますか?

自分自身の経験や同じ分野の研究者との話し合いで、水から重金属イオンや化学物質のようなさまざまな汚染物質を検知して除去する作業がすでに行われていることは明らかです。でも今のところ、微生物のような病原体に対してはあまり良いセンサーがありません。微生物の中には、他の微生物を見つけて食品や水中の病原体を検出するバイオセンサーを構築できるものもあるという事実を利用できれば、本当にすばらしいことですね。これが感度の点で電子センサーを上回るところです。生物学的汚染は、私にとっては化学的汚染より重要ではないにしても同等の問題です。

  1. MITの次のステップは何ですか?

自分がやってきた研究は本当にエキサイティングですが、昨年、私はあるスタートアップのコンペにかかわりました。なので、商業化に向けた研究を進めるというキャリアパスもありえますね。ただやりたいことがまだたくさんあるので、しばらくは選択肢を模索していきます。