都市は活況を呈しています。その数字は驚異的なものです:

世界の都市人口は過去15年間で22%増加し[1]、42億人を超えています。2030年までに、世界には人口1,000万人以上のメガシティが43出現し、そのほとんどが発展途上地域にあると予測されています。2050年には、世界人口の約70%に当たる約98億人が都市部に住むことになると予測されています[2]

都市生活の大きな魅力とは何でしょうか? それは、より多くの給与の高い仕事、交通や電力を含む効率的なインフラ、また、教育や優れた医療制度などを通じた、より快適な生活への展望というパワフルな要素の組み合わせです。

しかし、都市の急激な成長と共に、食料や水からエネルギー、空間、またクリーンな空気に至るまで、資源に対する需要も劇的に高まります。世界各地で過去の優先事項をもとに設計された都市は、現在の人口のニーズを満たす圧力の下で喘いでいます。 

難題は恐るべきスピードで増加しています。スイスに本拠を置く国際規格機関である、国際電気標準会議(IEC)によれば、「都市部の人口は移住や出産によって毎日約15万人増加している」とのことです。[3]

Abdul Latif Jameel Perspectivesの記事Redesigning our cities(都市の再設計)では、都市のコミュニティの将来、つまり私たちの生活様式の将来がこの成長を適切に管理し、テクノロジーを活用して新しい生活や働き方、そして移動の方法などをどのように変革するにかかっていることを論じています。それは、ビジネスや雇用をサポートするための信頼性の高い高速デジタルインフラを維持しながら、住宅、交通、エネルギーシステムなどの重要な要件を満たすための新しいアイデアを開発し、教育や医療などのサービスに向けた新しいモデルを見つけることを意味します。

人々の力

最初に正しく行うべき事柄の一つが、エネルギーです。都市が存在するためには、エネルギーが必要です。それはかなりの量です。今後、世界のエネルギー消費量は、都市開発と電気自動車によるものが影響し、2050年までに倍増すると予測されており、伴って既存のエネルギー源がさらに枯渇することが危惧されています[4]。地表において都市部が占める割合はわずか3%しかないにもかかわらず、既に世界のエネルギーの3分の2以上を消費しています[5]。アブドゥル・ラティフ・ジャミールの副社長兼副会長のファディ・ジャミールが最近のSpotlightの記事で論じているように、より持続可能なエネルギー源への転換による有害な排出量の削減は、最も大きな課題のひとつです。都市の需要が飛躍的に増加するに伴い、より持続可能なエネルギー源を通じて都市の成長を管理することがますます重要になってきます。

Perspectivesの記事に概説されているように、2050年までに、世界の電力需要の3分の1以上(35%)を風力エネルギーだけで満たすことができます。これは、世界で最も優れた発電源となる可能性があります。同様に、太陽エネルギーは、成長する都市に非常に大きな可能性を秘めています。2050年までに、世界の総電力需要の25%を太陽光で発電することが可能になります。

Building Cities

エネルギー貯蔵技術の急速な進歩と相まって、再生可能エネルギーは、年中無休体制で都市のエネルギー需要を満たす可能性を秘めています。Abdul Latif Jameel Energyの一部であるFRVは、英国のデベロッパーであるHarmony Energyと提携し、ドーセット州のHoles Bayと、ウェストサセックス州のContegoで15 MWhの実用規模バッテリーアレイを開発しました。この分野と他の新興技術については、ファディ・ジャミールがホストを務めた先日のSpotlightのポッドキャストでさらに詳しく解説しています。

Tesla Powerwall
Teslaの国内向けPowerwallの一例。

TeslaのPowerwallは、風力発電や太陽光パネルなどの地域の電源で発電したエネルギーを蓄電できるリチウムイオンのバッテリーパックです。未来の都市では、Powerwallのような国内発電(風車やルーヴのソーラーパネルなど)から国内蓄電が増加する可能性もあります。

Powerwallは、Teslaの太陽光ルーフと併用で使用するように設計されており、屋根瓦を最先端のソーラーパネルに置き換えるものです。

未来はスマート

都市は、そこに人が暮らしてこそ成り立つものです。繁栄するためには、安定した十分な人口が必要です。それは、多様な人々とその家族にとって魅力的な場所である必要がある、という意味です。

ここで重要なのは、人々が楽しく過ごすことができるさまざまな場所があるということです。公共スペースに投資することで(舗装道路の拡張、施設の改善、交通量の削減)、都市は、住民や労働者、訪問者にとって交流したり買い物をして過ごしたいと思う場所になります。

この一部は物理的なインフラに関わるものです。それはまた、相互接続されたスマートシティのテクノロジーに投資をすることで、私たちの都市をより快適な生活環境に変えることができるということにも関わっています。

バルセロナでは、人の動きを感知して、照明を落とすことができる1万個のLEDスマート街灯を設置し、誰もいない時にはエネルギーを節約しています。また、スマートランプの電柱は、市内全域で無料のWi-Fiを提供し、また、大気や騒音の汚染データを収集しています。

イギリスのヨークでは、国内最大規模のゼロカーボン住宅プロジェクトという野心的な取り組みを行っています。これは2020年に発表された自動車を排除した8つの敷地に600戸の住宅を建設するというプロジェクトです。各住宅には、ソーラーパネル、自転車置き場、充電ポイントが備えられ、カーゴバイク(運搬用自転車)をレンタルできます。

また、ドバイも、アラブ首長国連邦における最初のゼロ収支エネルギー開発である「持続可能な都市」によって、未来都市へのビジョンを示しています。

Dubai Sustainable City
ドバイの持続可能な都市。写真提供:© The Sustainable City.

移動の対象

私たちの都市が直面しているもう一つの大きな変化は交通と移動に関連するものです。高燃費のガソリン車がより環境に優しい自動車に取って代わるだけではありません。電気自動車は2030[6]年までに市場シェアを30%にのばす可能性があります。自律型電気自動車と都市を結ぶ高速鉄道システムにより、2050[7]年までに市内の車の数を最大90%削減できるという研究結果がでています。当社のPerspectivesのe-mobilityに関する記事で詳細を説明しています。

独立系技術シンクタンクのRethinkXは、運転手のいない自動運転車が規制承認されたら、10年以内に、米国における走行距離の95%は自動運転EV(電気自動車)による走行距離が占めるだろうと主張しています。これにより、アメリカ国内の道路を走る乗用車の数は、現在の2億4,700万台から2030年までには4,400万台に減少する可能性があります[8]

アブドゥル・ラティフ・ジャミールは、モビリティ分野のパイオニアとして、トヨタとの長年にわたる提携を通してモビリティ革命に貢献していることを誇りに思っています。トヨタとは、Lexusのハイブリッド技術のフラッグシップであるPriusや水素燃料電池を使うMiraiのような持続可能な自動車、さらに最近ではRIVIANJoby Aviationのようなモビリティ・ディスラプターズへの投資も行う世界的なパイオニア企業です。

では、もし道路を走る車が減ったとして、私たちの未来の都市では、自動車以外に何がモビリティを提供してくれるのでしょうか? 答えは「Mobility-as-a-Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」または、MaaSと呼ばれるものです。

さまざまな移動手段を組み合わせたMaaSは、ドア・ツー・ドアで移動をシームレスに統合し、すべての予約をスマートフォンで可能にします。MaaSシステムのメリットは、自律走行車から電気マイクロスクーター、電気バス、電気エアタクシーに至るまで、不要な移動の削減、二酸化炭素排出量の削減、混雑の緩和、利便性の向上、コスト削減などを実現できることです。

自家用車の所有数を削減することで、私たちの道路が実際に何のためにあるのか考え直すことへの大きく貢献するでしょう。我慢して、汚染され渋滞した「抜け道」を通って職場に行きますか?それとも、緑豊かで清潔、安全な場所で楽しんだり、人と会ってリラックスしたりしますか?

Anne Hidalgo
アンヌ・イダルゴ、パリ市長 – 「15分都市」

コペンハーゲンでは、数十年にわたって歩行者に優しい政策がとられてきました。現在、市民の約80%が徒歩、14%が自転車を移動手段としています。[9]

野心的な計画を打ち出したパリのアンヌ・イダルゴ市長の「15分都市」が世界的に注目されています。「自宅から徒歩や自転車で15分以内に必要なものがすべて揃う」というシンプルで強力なアイデアを出しています。[10]

このプランでは、子供のための公共空間の創出、駐車場の削減、緑地や小規模な都市型農業の導入、地元企業への投資、社会的にミックスされたコミュニティの形成などを想定しています。

バルセロナ、デトロイト、ロンドン、メルボルン、ミラノ、ポートランドのように多様な都市のリーダーは、同様のアイデアを模索していると言われています。一方、「15分都市」というアイデア自体は、気候変動との取り組みの中で、世界の97の大都市を結ぶ組織、「C40 Cities」からのお墨付きをもらっています。[11]

Paris 15 minute city
画像提供:© Paris En Commun Anne Hidalgo

持続可能、安全、成功

世界は共有された都市の未来に向けて、急速に動いています。このようなアイデアがあるからこそ、私たちの都市は、これから先何世代にもわたって、地域社会、商業、文化の中心であり続けることができるのです。

輸送からエネルギー、電子商取引、不動産に至るまで、75年にわたり生活のインフラの投資にコミットしてきたアブドゥル・ラティフ・ジャミールは、よりクリーンで環境に優しく、安全な未来をすべての人々に提供するために取り組んできました。この変革の重要なグローバルプレーヤーであることを誇りに思っています。

[1] Future of Cities report, European Commission, April 2019

[2] 68% of the world population projected to live in urban areas by 2050, UN Department of Economic and Social Affairs

[3] Orchestrating infrastructure for sustainable Smart Cities, IEC, 2014

[4] https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Industries/Oil%20and%20Gas/Our%20Insights/Global%20Energy%20Perspective%202019/McKinsey-Energy-Insights-Global-Energy-Perspective-2019_Reference-Case-Summary.ashx

[5] Reshaping Energy Systems for Future Cities – Renewable Energy World

[6] Global EV Outlook 2020 – Analysis – IEA

[7] Creating Future Cities with Self-Driving Vehicles, Urban Redevelopment Authority of Singapore

[8] 95% of U.S. car miles will be in self-driven, electric or shared vehicles, RethinkX

[9] https://ec.europa.eu/environment/pubs/pdf/streets_people.pdf

[10] Parisians will live within a 15-minute radius, Eurocities

[11] C40 : Agenda for a Green and Just Recovery