ユネスコから新たに認定を受け、国内全域に投資を行っているサウジアラビアは、文化ツーリズムの人気スポットになることを目指しています。

サウジアラビアのいくつかの地域は、「ビジョン2030」にまとめられている国の大胆な変革プログラムとは無縁です。事業から医療、社会開発、教育までに至るサウジアラビアの意欲的な改革は世界中の注目を集めています。また、サウジアラビア市民全員に明るい未来をもたらす一助になっています。

ビジョン2030」に載っている商業上の目標や投資目標で引き合いにだされることが多いのは、サウジアラビアの観光・文化セクターの開発であり、このセクターはすでに著しく進歩しています。

2018年6月、アラビア半島東部アハサー地方のオアシスが、新たな3つのユネスコ世界遺産のうちの1つとして発表され、ウェストミンスター寺院(英国)、グランドキャニオン国立公園(米国)、万里の長城(中国)、メンフィスとその墓地遺跡 – ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯(エジプト)などと並ぶ地位が与えられました。

ジェッダ歴史地区:2014年にユネスコ世界遺産一覧に登録

実際、過去10年間でサウジアラビアの5地区がユネスコ世界遺産一覧に登録されています。アハサー・オアシスのほかに、ハーイル地方の岩絵(2015年)、歴史都市ジェッダ(2014年)、ディルイーヤのツライフ地区(2010年)、マダイン・サーレハ(2008年)[1]のすべてがすでに重要な世界遺産に認定されました。

サウジアラビア屈指の緑豊かな地域であるアハサーには、庭園、運河、湧き水と、歴史的建物、都市構造、遺跡があり、250万本のナツメヤシもあります[2]。9,000~11,000年前と考えられる[3]新石器時代から人間が定住していたという証拠がある一方で、アハサー自体が紀元前5,000年にさかのぼる街で、ユネスコによると「無類の地球文化的景観および人間と環境の共生の特別な例[4]」ということです。

ユネスコによるアハサー認定決定に続いて、サウジ観光・国家遺産委員会(Saudi Commission for Tourism and National Heritage 、SCTH)は、同地域内および周辺における複数の投資プログラムを発表しました。これには、近隣の遺産や建造物の修復と再建、地域博物館建設も含まれます。

サウジアラビアは1946年11月にユネスコに加盟していますが、主要なMENAT(中東、北アフリカ、トルコ)文化ツーリズムスポットとして高まりつつあるサウジアラビアの重要性に影響力を及ぼすほど、対外的に認識されていません。官民セクターによる多額の投資も、「ビジョン2030」のゴール達成とサウジアラビア文化アトラクションの復興に生かされてきました。

アハサーを見渡す丘(写真クレジット© Saudi Tourism)

「観光・レジャーセクターにおいては、国際的に最高水準のアトラクションを創出し、サウジアラビアの歴史と遺産を整え、開発します。」

-ビジョン2030

世界最高峰の体験を提供する

2018年9月、リヤドからわずか40kmしか離れていない場所に、敷地面積334km2に及ぶ娯楽、スポーツ、文化を楽しめるスポットをサルマン国王(King Salman)が創設しました。Qiddiyaの正式開業式典にはオープンムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed Bin Salman)も出席しました。Qiddiyaは、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(Public Investment Fund、PIF)が後援。2030年までの目標来場者数は1,700万人です[5]。サウジ市民に世界超一流のエンターテインメントを楽しむチャンスを提供することによって、かつては海外旅行で費やされていた数十億ドルをQiddiyaが集めるようになることが期待されています。

その他の文化開発も、各地で、同様に目覚ましいペースで行われています。フランス政府との10年間のパートナーシップのもと、遺跡発掘、輸送インフラ、博物館およびホテルの建設はすべて、ウラー地域を「文化観光の拠点」へと変貌させるための推定200億ドルに及ぶ投資で完了する予定です[6]

また、ターイフで毎年開催される文化・芸術祭を支援するために考案された敷地面積10,000,000m2の「Souq Okaz City」開発に、さらに420億米ドルの投資が行われる予定です[7]

サウジアラビアの豊かな遺産を一層魅力的に

ジェッダでは、Abdul Latif Jameelおよびそのソーシャルエンタープライズ組織であるCommunity Jameelが、サウジアラビアの豊かな文化アトラクションの魅力を高める取り組みを熱心に行っています。その媒介となる「Hayy: Creative Hub」は、サウジアラビアのアーティスト、脚本家、写真家、映画制作者、起業家が相互に支援、助言、協力を行うために共同利用できる環境となる、敷地面積17,000 m2のアートセンターです。

 ジャミール伝統芸術館(Jameel House of Traditional Arts)(アルバラッド)、ジェッダ彫刻美術館(Jeddah Sculpture Museum)と並んで、この会場では、国内外の現代美術展が開催される予定です。この3館は、ジェッタの文化スポットトリオとして、新しい文化財を若く元気な国民や世界中から訪れる観光旅行者に伝える政府の目標を達成できるよう支えています。

 「たくさんの博物館を設立し、新しい観光地や遺跡、文化スポットをつくり、王国内での巡礼体験をより良いものにします。」

-ビジョン2030

Art Jameel所長のアントニア・カーヴァ―氏(Antonia Carver)のコメントです。「ここ数年、特にサウジ・アーツ・カウンシル(Saudi Arts Council総合娯楽局(General Entertainment Authority、総合文化庁(General Cultural Authority)、ミスク財団(MiSK Foundation、芸術省(Ministry of Arts)によって飛躍的発展を遂げました。しかし、ジェッダを訪れる世界的リーダーの数は、まだそれほど多くはありません。これは、国内外の交流を創出したいというHayyが期待している事柄の一つです。」

Community JameelおよびAbdul Latif Jameelの幅広い組織は、サウジアラビアで進行中の変革を支援し、堅固で活気ある文化シーン、堅牢な経済インフラ、健全な生活環境の永久不変の重要性を認識することに力を尽くしています。

[1] Saudi Arabia’s Al-Ahsa desert oasis becomes UNESCO World Heritage site, Arab News, 30 June 2018.

[2] Al-Ahsa Oasis, an Evolving Cultural Landscape, UNESCO, accessed October 2018

[3] UNESCO World Heritage listing to support Saudi cultural tourism, Oxford Business Group, 14 August 2018

[4] Al-Ahsa Oasis, an Evolving Cultural Landscape, UNESCO, accessed October 2018

[5] Saudi Arabia’s Qiddiya project to create a self-sustaining ecosystem, Thomson Reuters Zawya, 23 September 2018

[6] UNESCO World Heritage listing to support Saudi cultural tourism, Oxford Business Group, 14 August 2018

[7] UNESCO World Heritage listing to support Saudi cultural tourism, Oxford Business Group, 14 August 2018